高等部進路指導

高等部の進路指導の方針は「卒業後の進路や生活を自分自身で考え、選択・決定するための力を高める」です。また、高等部という年齢を考慮した指導を取り入れ、社会へ出て行くための態度や自立した生活を送ることができる力などを身に付けるための指導を行います。
高等部では、教育活動全体が社会参加や自立につながる指導と考えています。その中でも特に「職業Ⅰ」や「職業Ⅱ」を中心に、将来の社会参加に向けての意識を高め、必要となる知識や態度及び習慣等を身に付けるための学習を行っています。また、年2回の「産業現場等における実習」を通して、実際に職場を体験し、卒業後の進路先を模索していきます。

ねらい

○習得した知識や技能を活用し、自己の課題と向き合いながら、改善に向けて主体的に取り組む力を育てる。

○働く経験を通して、働く意味や意義について知り、将来の生活について自ら考える力を育てる。

○卒業後の進路や家庭での生活を充実したものにするために、目標を立てて主体的に実践していく力を育てる。

内容

○「職業Ⅰ」「職業Ⅱ」を通して、働くために必要な知識や経験を増やす。
○「職業Ⅱ」を通して働く態度や喜びを知り、基礎的な技能を習得し、実践力を養う。
○「産業現場等における実習」を通して、実際に働くことを経験する。

具体的な指導内容

○「職業Ⅰ」では、1年生から3年生までを見通して系統的に計画した内容を指導します。それぞれの学年で、社会参加に向けての意識や知識、経験を積み重ねていくことで、卒業に向けて一人一人の社会参加へ向けた意識を高めていきます。「職業Ⅱ」とは別に働くための基礎的な力を養うための活動にも取り組み、勤労意欲や職業意識を高めることを目指します。
○「職業Ⅱ」では、「職業Ⅰ」の学習で学んだことを生かしながら、働く意欲や態度を身に付け、喜びや成就感を知ること、基礎的な技能や能力の習得、実践力を養うことを指導する。平成29年度にはサービス班を新設し、接客サービスの活動を通して、社会や人との間で仕事をする力を高め、コミュニケーション能力の向上を図っています。

○「職業Ⅱ」では、農園班、工芸班、サービス班の中で生産活動や制作活動など体験的な活動を通して働く意欲や態度を身に付けます。達成感や成就感などを知ること、基礎的な技能や能力の習得、実践力を養うことを指導します。

○「産業現場等における実習」は、年間2回(5月、10月)行い、実社会での実習を通し、自分の進路について考えること、職業生活・社会生活で必要なことやコミュニケーション等について学ぶこと、現在や将来に向けての自分の課題を知ることに取り組みます。

高等部各学年での「職業」のねらい及び「産業現場等における実習」の位置付け

高等部「職業」のねらい

  • 自分について知り、自分に合った職業を選択する。
  • 職業生活に必要な知識・技能を高める。
  • 働くことの意義を知り、働く喜びや勤労観を養う。

1年生:経験を広め、自分について理解し、卒業後の生活に関心をもつ時期

職業
  • 自分について知り、関心をもつ。
  • 様々な活動を通して、卒業後の生活に意識を向ける。
  • 様々な仕事や社会生活について、関心をもつ。
産業現場等における実習
  • 1学期の実習(5月)は校内での実習を行い、働くことを経験して高等部卒業後の生活について考えることをねらいとしています。

  • 2学期の実習(10月)では、実習期間中に校内実習と校外実習(4日間程度)を行います。実際の仕事を経験することで、自分の課題を知り、将来の就労生活について向けて必要なこと考える機会としています。

2年生:進路の方向性や将来の生活について探る時期

職業
  • 自分に合った生活や仕事とは何かを考える。
  • 様々な実習先を経験し、進路選択の幅を広げていく。
  • 社会人としてのルールやマナーについての理解を深める。
産業現場等における実習
  • 2年次は2回の校外実習を経験します。希望する仕事の経験、通勤範囲の拡大、宿泊を伴う実習の経験(GH利用)などを通して、自分の課題を明らかにし、進路の方向性を探ることをねらいとしています。12月頃までに具体的な方向性(一般就労、福祉サービスの利用など)を考えます。

  • 高等部卒業後に『就労継続支援B型』のサービス利用を希望する生徒には、就労移行支援事業所などでの就労アセスメントが必要になります。2年の実習時から適宜行っていきます。

3年生:進路や将来の生活の具体化、決定する時期

職業
  • 自分に合った生活や仕事について考え、自己選択、自己決定していく。
  • 自分が活用できる制度や相談していく関係機関について知る。
  • 余暇や社会的なトラブルなど、卒業後の生活で必要となる知識を得る。
産業現場等における実習
  • 今までの経験を基に、卒業後の進路先を具体的に決めて、現場実習を行います。
  • 2回の実習で、進路決定へと進めていきます。2回の実習で進路先が決まらない場合には、臨時の実習を実施します。
  • 卒業後の生活を想定しながら、より具体的な課題に取り組みます。
個別移行支援計画
  • 進路先が決まった段階で、個別移行支援計画を作成します。
  • 卒業すると環境が大きく変わります。本人がどのような生活を希望し、どのような支援を必要としているのか、「労働」「福祉」「医療」「学校」などの各関係機関と本人・保護者でケース会議を開き、必要な支援を役割分担します。

「産業現場等における実習」の意義

生徒にとって
  • 定時出勤、仕事への集中力など働く習慣を身につける
  • 働くことの喜びや厳しさを体験を通して学ぶ
  • 職場のルールや職場の方とのかかわり方を学ぶ
学校にとって
  • 校内での学習の成果を確認する
  • 自立・社会参加に向けた課題を探る
  • 今後の職業教育・進路学習の参考にする
保護者にとって
  • 生徒の適正や希望する職業について理解を深める
  • 具体的な進路の方向性について考える機会
  • 卒業後をイメージした家庭での支援につなげる

高等部卒業後の進路先について

※卒業後の追指導

原則的に卒業後2年間、卒業生の進路状況の確認やモニタリング会議への参加などを

行います。それ以降は必要に応じて実施します。

卒業後

1年目

4月 実習依頼に併せ、サービス利用状況や就労後の状況把握
5,7,10月 現場実習巡回や夏季休業にあわせ、進路先への状況確認
随時 モニタリング会議への参加

卒業後

2年目

5,7,10月 現場実習巡回や夏季休業にあわせ、進路先への状況確認
随時 モニタリング会議への参加。卒業後の生活や年金取得状況の確認

進路決定までの手順について(高等部3年生)

(1)福祉サービス事業所などの利用を希望する場合

 

2年時(3月)

進路希望先の検討

 

産業現場等における実習の状況などを踏まえ、福祉サービス事業所の仕事内容や状況などから実習先を検討します。

5月

第1回産業現場等における実習

卒業後の進路として希望するサービス事業所などで行います。仕事内容を再度確認し、事業所から評価をいただきます。

7月

 

個別懇談

「第1回産業現場等における実習」の様子や実習先からの評価などを基に、進路先について再度検討します。

夏季

休業中

進路懇談

 

居住地域の障害福祉担当者を交えて、卒業後の進路希望や生活について確認します。

臨時の産業現場等における実習

7月の個別懇談で他の実習先を体験する必要があると判断した場合に、臨時で実習を行います。

10月

第2回産業現場等における実習

高等部での最後の実習となります。進路先として希望しているサービス事業所で行い、卒業後の受け入れを依頼します。

11月~

 1月

進路先決定

サービス事業所から受け入れについての内諾を得ます。

サービス利用計画

の作成

内諾後、本人及び保護者が市町村への申請行い、市村の委託する相談事業所にサービス等利用計画の作成を依頼します。

臨時の産業現場等における実習

第2回の実習の評価を受け、必要がある場合は臨時で実習を行います。

個別移行支援計画の作成

各関係機関に参加していただき、ケース会議を実施します。

2月

サービス利用計画決定

移行支援計画決定版

本人への支援の役割を決定し、それに基づいた個別移行支援計画を作成します。サービス等利用計画(案)を検討します。

(2)一般就労(一般企業)を希望する場合

1月~

2月

進路希望先の検討

産業現場等における実習の状況などを踏まえ、一般企業で仕事をしていけるのかどうかを客観的に検討します。

2月~

  3月

実習先の検討

生徒が希望する職種の会社を訪問し、障害者雇用での就職についての確認、依頼を行います。

5月

 

第1回産業現場等における実習

希望する職種の事業所で実習を行います。

(職種によっては難しい場合もあります。)

7月

 

個別懇談

「第1回産業現場等における実習」の様子や実習先からの評価などを基に、進路先について確認します。

夏季

休業中

進路懇談

臨時産業現場等

における実習

「第1回産業現場等における実習」の様子や実習先からの評価などを基に、進路先について再度検討します。雇用の可能性があれば、2回目の実習も同じ会社で行います。

※他の会社を希望する場合、必要があれば夏季休業中に『臨時実習』を行います。

9月~

求職者登録

ハローワークに求職者登録票を提出し、必要な手続きを行います。

この登録は、雇用についての窓口をハローワークとし、会社から求人票を提出していただくための準備です。

10月

第2回産業現場等における実習

卒業後の雇用を前提としての最終判断をしていただくための実習となります。実習の結果で採用か不採用かが判断されます。

*採用されなかった場合には、『臨時実習』を実施します。

11月~

   1月

面接・入社試験

      など

会社がハローワークに求人票を提出したら、ハローワークから紹介状が届きます。会社によっては、面接試験や入社試験などが実施されます。

12月~

    1月

・職業評価

(必要に応じて)

・「ありす」の登録

・山梨障害者職業センターにおいて職業評価を受検し、判定を受けます。この判定は障害者雇用率など雇用対策に反映されます。

・『障害者就業・生活支援センターありす』に登録し、就職した後のサポートをお願いします。

1月~

2月

採用内定

ハローワークとともに進路担当が企業を訪問し、雇用形態や雇用条件、利用する制度について確認します。

2月

 

個別移行支援計画の作成

関係機関に参加していただき、ケース会議を実施します。

卒業後の支援の役割を決定し、それに基づいた個別移行支援計画を作成します。

3月~

   4月

 

採用

障害者雇用で会社に入社します。ほとんどの場合がパート採用ですので、時間給となります。(最低賃金は保証されます)

会社が『トライアル雇用』制度を利用した場合は、採用日から3ヶ月間が試行期間となります。この間の仕事の状況などから、正式に採用するかどうかが決定されます。

 

(参考)福祉サービス事業所を利用するための手続き

(資料1)福祉サービス事業所の概要

(資料2)過去の高等部卒業生 主な進路先(卒業時)

(資料3)令和5年度進路指導部年間計画

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